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東京 白山の喫茶店にて(少しリセットされた土曜日の朝の話)

休みをとり、朝イチで堺のとある散髪屋さんに行った。

カタカナのゴテっとした名前やアメリカンな内装とは裏腹に、

年配のスタッフがいて、ジャズもかかる落ち着いた雰囲気。

少し変わった趣きがある空間。

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若い、といっても40歳前後の店員さんに髪を切ってもらう。

その人に形容詞を当てはめるならば、「静謐」という言葉が、自分的にはしっくりくる。

とても穏やかな雰囲気を持った人である。

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それまでは、髪を切ってもらう最中に会話はほとんどなかったが、

その日は、平日で、しかも朝から雨で

お客さんがいなかったこともあり、色々と話をしてくれた。

なんというか、ぽとぽとと水滴が落ちるように。

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一年前に大阪で地震があった時に、

環状線内に1時間閉じ込められたこと。

出身である新潟で散髪屋さんを営んでいた時に、

中越地震があり、小さな子どもがいる中、

10日間車中生活を余儀なくされたこと。

その時に、奥さんが「なんで新潟なんかに来ちゃったんだろう」と、

毎晩ポロポロ泣いていたこと。

その後、大阪に出て、今の職に就いたこと。

毎朝地震がこないように祈っていること。

などを、話してくれた。

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僕は髪を切ってもらいながら、何故か静かなクラシック音楽を

聴いているような気持ちになった。

大阪人では無いので、特に会話にオチのようなものはない。

ふと、「自分の人生(の一部)を人に語る」という行為は、

音楽の演奏に近いのではないかと、

いつもの取り留めのない思いが湧いてきた。

そして、何より心地が良かった。

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この文章は、実は東京で書いている。

学生時代の友人たちと酒を飲み、近況や音楽のことなどを

ゆっくり話した後に、友人の1人の家に泊めてもらった。

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朝、目が覚めたらその友人はまだ眠っていたので、そのまま家を出た。

グーグルマップを頼りに、銭湯を探し、駒込付近まで歩く。

通り沿いの並木は、大きい。

紫陽花が咲いている。

梅雨入りしたようだが、昨日の雨はすっかり上がっていて、

湿気も含めて気温もちょうどいい。

そして、町は静かだった。

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トーストを食べた喫茶店でも、

静かなクラシック音楽がかかっている。

客は僕しかいない。

心地が良かった。

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ふと昨日の散髪屋さんのことを思い出した。

メモとして書き留めておこうと思ったら、

書きあがってしまった。

そうか、心地よさは、静かさと親戚みたいなものなのか。

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少しリセットされた土曜日の朝の話である。

今回はオチないで。

ドラム すぎた

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